手術のためにお医者さんに全てを託した。
去り際に診察台の上から
「行かないで!」
確かにそう言った。
でも、
大丈夫!絶対元気になっておうちに帰れるから!
そう言って診察室のドアを閉めた。
今となってはあの時、抱きしめてあげればよかった・・・。
小豆も僕もホントは気付いていた。
もう会えなくなるって・・・
だから、その数日は狂ったように動画や写真を撮った。
信じたくなかったし、信じたら現実になってしまう気がして、感じてたものは押し殺した。
7時間にも及んだが、手術は成功した。
面会に行く予定時間の3時間前までは
無事麻酔からも覚めて、立っておしっこもしていた。
順調に回復に向かうはずだった・・・。
運命は変わらないのか・・・。
行った時には冷たくなりかかっていた・・・。
僕もカミさんもその場で泣き崩れた。
「パパのことが大好きな子ね!ママのことをライバルだと思っているわ!」
アニマルコミュニケーションの師匠がはじめて小豆を見たときにそう教えてくれた。
それからしばらくして、僕もカミさんもアニマルコミュニケーションを習うことにした。
冷たくなった小豆を抱きかかえ、お医者さんからの帰り道、小豆を探す・・・。
いない・・・。
小豆のエネルギーがどこにもいない・・・。
家に着いて、兄妹のように育った大豆に報告をした。
大豆は優しい子だから、冷たくなった小豆をずっと舐め続けていた・・。
「何で動かないの?」
たまに僕の顔を見ては、またひたすら舐め続ける・・・。
「大ちゃん、もう小豆は動かないんだよ・・・」
そう言い聞かせて小豆を隣の部屋に移した。
大豆が寂しそうな声でクゥーンと言った・・・。
その瞬間、パーンとビジョンが飛び込んできた。
5~6匹・・・、もう少しいるだろうか・・・。
たくさんの犬を相手に小豆が一生懸命吠えている。
「行かない!アタチそっちには行かない!」
何度も何度もその光景が浮かぶ・・・。
小豆は死んだことに気付いていないのだろうか・・・。
虹の橋を渡りたがらない。
しばらくして、左肩にポワンと暖かなエネルギーが降りてきた。
「小豆だ!」
瞬時にわかった!
左を向くと頬をぺろぺろ舐めてくる!
「アタチここにいる!」
耳元で声が聞こえる。
小豆はどうやら僕のそばにいられるのを喜んでくれている。
しかし、現実は酷だ!
目の前にいる冷たくなった小豆を見れば涙があふれてくる・・・。
翌日、火葬場に行った。
小豆の姿ともこれで本当にお別れだ・・・。
まだその現実を受け止められない自分がいて、また涙があふれてくる・・・。
火葬場について、職員さんが
「最後のお別れです。」そういった瞬間に小豆が耳元に話しかけてくる。
「ねえねえ、アタチの体どうするの?」
「これから焼いて骨だけにしてもらうんだよ。」
「何でそんなことするの?」
「このままだと腐っちゃうでしょ?だからアズのこと忘れないようにお骨にしてもらってお墓にいれるの。」
「そんなことしなくてもアタチここにいるから忘れないでしょ?」
隣では職員さんとカミさんが手を合わしている・・・。
アズが耳元でそんなこと話しかけてくるもんだから少し噴出しそうになったが、
グッとこらえる。
絶対に笑ってはいけないところだ・・・。
お骨になった小豆をカミさんが抱き抱え、帰りの車の中でその話をした。
カミさん
「なんで?なんでアズは私のところに来てくれないの?ズルイ!」
そういった瞬間に僕の肩からフッといいなくなった。
「あっ、来た!」
カミさんの後頭部に行ったらしい・・・。
同情エネルギーというのでしょうか・・・。
小豆はまたすぐに戻ってきて、
「ママのところに行って来たよ!でもアタチの方がずっとパパの近くにいるんだから!」
複雑である・・・。
小豆を失った悲しい現実と、隣で悔しがるカミさん。
すぐ近くにいるのにアズを抱きしめてあげられない切なさ。
エネルギーで小豆を包み込んであげると喜んでくれる微妙な幸福感。
とにもかくにも
アニマルコミュニケーターになって良かった。
小豆のエネルギーを感じていられるだけで随分救われた。
そうでなければ今頃悲しみで気が狂っていたかもしれない。
アニマルコミュニケーターは人の心を救うために存在しなければいけない。
そう小豆が教えてくれた。