本当の笑顔

僕、犬が飼ってみたい!

当時、離れて暮らす息子は7歳。

そこでは4匹の猫を飼っていた。

 

何気なく言った言葉だが、何かずっと引っかかっていた・・・。

昔、仕事仲間と話していたときに 「もし犬を飼うとしたら なにがいい?」

という話題になり、何気にフレンチブルドッグ!と答えたのを思い出した。

松本市内にフレンチブルドッグを飼っているブリーダーさんが一軒だけあった から聞いてみると

「今は赤ちゃん生まれてないんだけど生まれたら連絡しますね!」

そう言われ、「あっ、いいんです、どうでも飼いたいわけではないので・・・。」

そういって断った。

それから何故か気になって、なんとなくネットで探してみた。

栃木のブリーダーさんで生まれた子。

「里親募集中!」

とても大切にされているのがわかる写真だったからつい電話をしてしまった・・・。

こうして、かごの中でウ○コまみれになって大豆が家に来た。

いろいろ本を買って調べたら、温度変化に弱い犬種とあった。

もちろん外で飼うつもりはなかったが、僕にとっては初めての室内犬だった。

 

正直、手を妬いた・・・。

物を取ったら絶対に放さない!ブルドッグ気質に加え、家具という家具をかじり倒す始末。

 

初めてということもあり躾に奮闘しつづけること半年・・・、松本のブリーダーさんから電話が来た。

「赤ちゃん生まれたので是非見に来てください!」

「あっ、いえ、もう別の子飼い始めたので・・・。」

「そうおっしゃらずに見るだけでも・・・」

ただでさえ手を妬いていた大豆に加え小豆が家にやってきた・・・。

小豆は女の子ということもあって、大豆のいたずらを逆に叱ってくれるようになった。

こうして2匹はいつも一緒。

時には3匹のような扱いをされることもしばしば・・・

いたずらしてどんなに怒られようとも大豆はいつも笑顔だった・・・。

そして何より優しかった。

人も犬も大好きで、誰かに会うと猛烈アタックからの熱烈歓迎ベロベロ。

逆に小豆は臆病で、いつも僕の足元にくっついていた。

 

こうして6年のときが過ぎた頃、一昨年、小豆が亡くなってしまった。

月末の忙しい7月27日のことだった・・・。

僕が極力悲しまないように、一ヶ月で一番忙しい日を選んだかのようだった・・・。

 

優しい大豆は、冷たくなった小豆に寄り添って、ずっと舐めていたのを今でも思い出す。

それからの大豆はどこか寂しげだった・・・。

 

それでも、「散歩」って言うと一目散に飛び掛ってきて「早く連れて行け!」という。

全速力で走り出す大豆の姿はどこかこっけいで、でもなんか嬉しかった。

 

そんな大豆がガンになった・・・。

 

進行が早く、先月まで元気に走り回っていたのに日に日に弱っていく・・・。

 

ガンが脾臓にも転移して血液を壊してしまう・・・。

 

毎日医者に通った。

 

もうダメかもしれない・・・。

いや、きっと治る!そしてまた飛び切りの笑顔を見せてくれる!

そんな葛藤が続いた・・・。

 

でも本当はわかっていた・・・。

わかろうとしないだけで・・・。

 

もうよろよろしか歩けなくなった大豆を連れて

小豆も大好きだったスカイパークへ連れて行った。

帰りたくないといって駄々をこねては、立ち止まると懇親の笑顔を見せる。

 

これが大豆が見せた最後の笑顔になった・・・。

 

あんなにいたずらばっかりして嫌がらせのマーキングとかして困らせたくせに

最後は懇親の力を振り絞ってトイレまで行って、トイレの手前でオシッコにまみれて倒れてしまった・・・。

 

いつでも見てあげられるように設置したペットカメラをみると佳澄さんが大豆を拭きながら

「大ちゃんオシッコの上で倒れちゃった」と言う。

朝の仕事を終えて一目散に家に帰った。

 

佳澄さんの腕の中で息を引き取った直後だった・・・。

すぐに心臓マッサージをした。

やり方もわからないくせに無我夢中でやった。

 

涙が止まらない・・・。

 

まだだ!お願い!

もう一度。

もう一度だけ返事をして!

 

もう大ちゃんは動かなかった・・・。

 

まだ温かい・・・。

 

僕は大豆が小豆にしたように、大豆に何度も何度も頬ずりをした。

 

何時間経っただろうか・・・?

「ありがとう・・・。」

そう言って大豆をそっと横たわらせた。

 

奇しくも年度末の最も忙しい3月27日の朝だった・・・。

 

ありがとう大好きだよ小豆。

ありがとう大好きだよ大ちゃん!

僕は、小豆と大豆から一番大切なことを教わった。